降雪地帯ではない我が家の周囲でも、やはり冬場となると最低気温はマイナスになり、朝方、車のフロントガラスが凍り付いています。
フロントガラスの氷を除去する手段もいくつかあるのですが、一番簡単な『お湯をかける』という方法を取っている人が多いかと。
かく言う私も、朝の霜取りはお湯をかけてフロントガラスについた氷をお湯で溶かしているのですが、一方で『お湯を使うとガラスが割れる!』といった話もチラホラ。
これまでずっとお湯を使ってきていますが、未だにガラスが割れる等の不具合が出たことはありません。
ということで今回は、冬場にフロントガラスが凍結した際の対処法で、
- なぜお湯を使うとまずいのか?
- ガラスが割れる仕組みは?
- お湯を使う際に気を付けること
について、簡単に解説したいと思います。
なぜお湯をフロントガラスにかけると割れる???
さて、まずなぜお湯をフロントガラスにかけると割れるのか?
これは普通にイメージがつくと思いますが、お湯というよりもその温度が問題です。
いわゆる”熱湯”を使うと割れます。
まぁ別にこれは、普通に想像できることですね。
特に別にフロントガラスに限らず、ガラスコップも同じです。
私も何度かガラスコップに熱いお湯を注いで割った経験があります(-_-)
ガラスに熱いお湯をかけるとマズイ!ということは、皆さんなんとなく想像できると思います。
でも、お風呂のお湯をコップに注いでも割れませんよね?
恐らく凍った車の窓ガラスにかけても割れないでしょう。
では、いったい何度くらいのお湯をガラスにかけると割れるのか?
実は、ある実験の結果、『大体、ガラスの温度とお湯の温度差が約60℃あるとガラスが割れる』という事が分かっているそうです。
なので、常温のガラスコップ(約20℃)であれば80℃くらいのお湯。
凍ったフロントガラスだと-数℃~0℃くらいでしょうから、大体5~60℃くらいのお湯で割れる計算になります。
なので電気ケトルとかポットとかで沸かしたお湯(90℃~100℃)をガラスにかけると、簡単に割れてしまうという事になります。
まぁ、まず居ませんよね、ケトルで沸かしたお湯をフロントガラスにぶっかけてる人は・・・(; ・`д・´)
何故ガラスは温度で割れる?その仕組みとは?
では、熱湯をガラスにかけると何故割れるのか?
それには大きく分けて二つの理由があります。
温度変化によるガラスの膨張
一つ目は温度変化によるガラスの膨張。
ガラスに限らず、物は温めれば膨らみ、冷やせば縮みます。
ようは、温度変化により変形するという性質があります。
そしてその変形量は大体温度と線形になります。
温度変化と比例して形状変化も増えていく、ということですね。
ではガラスの熱膨張率はというと・・・・大体10℃変わると0.09mmほど伸び縮みするようです。
思ったよりも少ないですね。
温度差60℃でも0.5mmくらいしか変形しないです・・・(; ・`д・´)
実は熱膨張率自体はそれほど問題ではありません。
ガラスの熱膨張率がほかの物質(たとえば車体に使われている金属類)と比べて高いかというと、それほど変わらないのです。ちなみに鉄と比べると、鉄の方が断然、熱による変形量多いです。
ただ、この性質と、次の性質が組み合わさると、ガラス特有の問題が生じます。
ガラス自体の脆さ
もう一つの原因は、ガラス自体の脆さです。
ここで言う脆さというのは、ガラスの割れやすさ、と言い換えても構いません。
材料の専門用語で言うと、”靭性(じんせい)が無い”と言ったりもします。
靭性が無い、というのはどういう状況か?
一言でいうと変形に対する許容量が小さいのです。
鉄の板を想像していただきたいのですが、鉄(アルミでも可)の薄い板に力を加えると、曲がります。
文房具にある、プラスチックでできている下敷きなんかも良く曲がりますよね。
こういう”曲がる”というのは、靭性が高いという事になります。
与えられた力に沿って変形することで、破壊を免れているのです。
逆に言うと、靭性のないガラスやダイヤモンド、セラミックといった物質は、
靭性が低い = 変形できない = 破壊が生じる
ということになります。
変形する陶器・・・なんて見たことないですよね?
ガラスもそうですが、ダイヤモンドにしても、固さは世界一と言われていますが、靭性が低い(脆い)ので、割と簡単に壊れてしまいます。
ガラスの熱膨張と低い靭性が合わさると・・・?
さて、ようやくここで熱湯でガラスが割れる仕組みが分かりました。
これまで解説した、
- ガラスの熱膨張(温度変化で変形する)
- ガラスの低い靭性(変形に弱く、すぐ破壊してしまう)
という性質から、ガラスに熱湯が掛かると下記のような事象が生じます。
それは、
- 熱湯をかける
- 熱湯が掛かった個所のガラスが膨張する(ガラスの熱膨張)
- 一方で、熱の影響を受けていない外縁部や裏側は膨張しない
- 高温部と低音部の変形量の差により、ガラス内部に応力が発生
- その応力が一定値を超えると、ガラスがその変形量に耐えられず、破壊が発生(ガラスの低い靭性)
という仕組みです。
では、これを防ぐにはどうすれば良いか?
もう一度ガラスの性質を記載します。
- ガラスの熱膨張(温度変化で変形する)
- ガラスの低い靭性(変形に弱く、すぐ破壊してしまう)
上記の内、靭性は材質そのものを変える必要があるため、残念ながら改善しようがありません。
強化ガラスにすれば熱湯で割れることは無いかもしれませんが、費用対効果が小さすぎますね・・・。
一方で、ガラスの熱膨張に関しても、温めればその分変形してしまうのでどうしようもないですが、温める温度によって、変形をある程度抑える事は可能です。
お湯を使う際に気を付けること
ということで、ほぼ上で答え出てますが、凍ったフロントガラスを溶かすのにお湯を使っ手も良いのですが、その温度には気を付けましょうね、というのが今回の結論となります。
上述した通り、ガラスは大体、温度差60℃で割れるそうです。
冬場の外気温を考慮すると、ガラスの温度はマイナス数℃になっている可能性がありますので、使うお湯の温度は50℃以下が良いでしょうね。
さらに、もう一点注意したいのが、ガラス状に何らかの理由で傷がある場合、熱いお湯をかけると傷が進展する可能性があります。
さきほど解説したガラスが割れるプロセスの内の”温度差による応力発生”という箇所、その応力の影響を最も受けるのはガラスの一番弱いところとなります。
つまり、ガラスの場合、飛び石等で傷が入っている個所があれば、そこに力が集中してしまいます。
なので、もしガラスに傷がついている場合、もしかすると気温がマイナス数℃で、ガラスの割れる温度差60℃以下であったとしても、割れが発生(or 進展)してしまうかもしれません。
こうなると、じゃあやっぱりお湯を使わない方が良いんじゃないの?と思ってしまいますが・・・
別に熱いお湯にこだわる必要はなく、”氷を溶かす”だけでよいのですから、ガラスが割れるほどの高温と、かけた傍から凍ってしまう程の低温の水を避ければよい”という話です。
私は大体水道の蛇口を捻って、40℃くらいのお湯と水を2:1くらいで混ぜて、温度低めのぬるま湯を作って使っています。
一応これまでガラスが割れたことはありません(*´ω`*)
毎日やるのは面倒ですが、解氷スプレーに無駄なお金を使うこともなく、スクレーパーやクレカなどを使って削り落とす必要もない、比較的お手軽な方法として続けています。
やっぱりお湯を使うのはちょっと・・・という方。そもそも氷を発生させない方法
対策としてはもう一点。
解氷スプレーやスクレーパー、ぬるま湯で氷を落とすというのが一般的な手法になるかと思いますが、そもそも氷が張らなければ良いので、それを防ぐためのカバーで覆ってしまうという方法もあります。
こんなやつです。
稀にやってる方がいらっしゃいますが、結局のところ、
- 解氷スプレーとちがって、冬の間常に買い続ける必要が無い
- スクレーパーと違って体力を消耗する必要が無い
- お湯によるガラス破損の心配もない
- 帰宅後に取り付けて、出発前に回収するだけの手間いらず
ということで、これが一番早いです(*´ω`*)
ちなみに、『ガラス面が隠せれば良いだけなのに、わざわざこんな商品買う必要ある?バルタオル掛けとけばいいやん』と思われるかもしれませんが、タオル系は水分吸ってガラスに張り付いたまま凍ってしまいますので、やめた方が良いかと(^-^;
まとめ
さて、まとめですが、
- ガラスにお湯(温度差60℃以上)を掛けると割れる可能性が高い。
- また、ガラス表面に傷があると、さらに割れやすくなる。
なので、さすがに熱湯をかけるのはマズイです。
お湯で溶かすのであれば、触れないような高温のお湯ではなく、蛇口を捻って出てくるぬるま湯(30℃~35℃)程度で十分です。
それでもやっぱり割れるんじゃないか・・・、と心配な方は、霜よけシートを使えば霜の付着を防げるのでお勧めです(*´ω`*)
こちらであれば、そもそも凍り付くのを防ぐことが出来、取り付け・取り外しもすぐにできますので、おすすめです(*´ω`*)
※尚、ぬるま湯でやってガラスが割れたとしても、当方としては責任は負いかねますので、自己責任でよろしくお願いします。