こんばんわ、たまです。
本日はエンジンの気筒数による違いについてお話ししたいと思います。
皆さん自分のバイクや欲しいバイクが “何気筒” かご存知でしょうか?前回、エンジンの冷却方法によってもエンジンの性格が決まってくるという話をしましたが、この気筒数によってもバイクの性能、性質が変わってきます。
ということで、気筒数による違いについて書いていきます(*´ω`*)
そもそも気筒数って?
気筒数というのは、簡単に言うとエンジン内にあるシリンダーと呼ばれる筒状の部屋の数のことです。種類としては単気筒、2気筒、4気筒といった感じで記載されています。
※車のエンジンですが、スバルEN07型 直列4気筒エンジンのモデルです。中央付近にピストンが収納されているシリンダーが4本あることが分かります。
バイクの冊子、ウェブカタログを見たときに、パワートレインやパワーユニットと称して搭載されているエンジンの詳細が書いてあります。例えば、
低・中速域での力強さと、高回転まで一気に吹け上がる爽快感を両立した新設計の水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒250ccエンジン。
上記文章は、HONDA CBR250RRのパワートレイン解説から引用してきましたが、色付けしている部分が搭載エンジンの気筒数を指しています。
そして、この気筒数の違いがエンジンの性能、性質に大きな影響を与えています(*´ω`*) そのため、メーカは各バイク(種類、排気量等)に合った気筒数を選んで搭載しています。
では、それぞれの気筒数の特徴を見ていきましょう。
単気筒エンジン
単気筒エンジンとは、エンジン内のシリンダーが1個だけのエンジンです。主にクラシックバイクや原動機付自転車等に使われます。
※HONDA CBR250R用単気筒エンジンモデル HONDA HPより引用
単気筒エンジンの特徴は
-メリット-
- 多気筒エンジンに比べ大トルクを出せる
- トルクで駆動するタイプなため、回転数を上げる必要がなく燃費が良くなる
- 部品点数が少なく済み軽量化ができる
-デメリット-
- 回転体重量が重くなるため高回転・高出力化が難しい
- 大排気量モデルには向かない
- 振動が多い
といった点となります。
高出力化が難しいことや、構造上どうしても振動が出てしまうといった欠点はあるものの、その発生トルクの大きさから、低速~中速で力を発揮するエンジンです。そして、その特性ゆえに高回転まで回す必要がなくなるため、燃費が良いことも特徴。50cc~400ccくらいのモデルで採用されており、そのどれもが豊かなトルクと良好な燃費性能を獲得しています。
単気筒エンジンがトルクに優れる訳
単気筒エンジンがトルクに優れると書きましたが、それはなぜでしょうか?
簡単に言うと、一回の燃焼で発生する力が同排気量であれば一番大きいからです。エンジン内の爆発でピストンを押し戻すことで、タイヤを回す駆動力を得ているわけですが、その爆発力が大きければ大きいほど、発生する力が大きいことは容易に想像できると思います。
250ccであれば、単気筒であれば単体で1/気筒の力を発生できますが、2気筒になると排気量125ccのシリンダーが2つなので0.5/気筒の力しか発生させることができません。(もちろん、気筒数が増えることによるメリットがありますので、それは後述します)
ということで、単気筒エンジンはシリンダーサイズが大きいため1回の燃焼で得られる力が大きく、結果、トルクが大きいエンジンとなります。
単気筒エンジンが採用されるバイクの種類は?
上記のような単気筒エンジンが採用されるバイクは下記のようなタイプ。
- クラシックバイク
- モタード(オフロードバイク)
- 低排気量バイク(原付含む)
- 低排気量スポーツバイク
スポーツバイクが入っているのが意外かもしれませんが、低排気量スポーツバイクというのは、ある程度回転数は上がるものの高回転高出力で走るというよりは、豊かな低速トルクで走るタイプを指します。CBR250Rとかがそうですね。
そして、クラシックバイクは先日の種類分類の項でも記載した通り、高回転。高出力を求めるというよりは、タウンユースで使いやすいトルクを重視する傾向がありますので単気筒エンジンを積んでいます。
モタードやオフロード車の場合は、その走行目的から、軽量でトルクの高いエンジンが要求されており、このエンジンが採用されています。
単気筒エンジンの適切な使い方
このような特性をもち、クラシックバイクや低排気量バイクに採用されている単気筒エンジンですが、基本的にはエンジンの鼓動を楽しみながらトコトコ走る、という使い方が向いています。
※YAMAHA SR400 400cc空冷単気筒エンジンを積むロングセラーバイク
低速トルクが豊かであるため、これを生かした走りができるのであればスポーツ走行も可能ですが、やはり高回転化に限界があるため馬力が高くないことが多く、また、ほとんどの単気筒バイクは車体構成がスポーツ志向になっていないことがほとんどです。
従い、ゆったりと景色を楽しみながら走りたい、自分のペースで走りたいといった目的に合わせて作られているバイクや軽量・高トルクが要求されるモタード、オフ車に最適なエンジン形式であると言えます(*´ω`*)
2気筒エンジン
2気筒エンジンとは、エンジン内のシリンダーが2個となっているエンジンです。従い、同排気量であれば、個々のシリンダーの排気量は単気筒の半分(250ccであれば125cc×2筒)となります。
2気筒エンジンは、現在低排気量~大排気量までで採用されている、とても汎用性の高いエンジン形式です。
2気筒エンジンの特徴は
-メリット-
- 単気筒エンジンに比べ回転数を上げることで出力を大きくできる
- 低排気量~大排気量まで様々な用途に応じたエンジンを作ることができる
- シリンダーの配置を変えることで特性を付与できる
-デメリット-
- (単気筒に比べると)低回転域でのトルクが小さい
- (単気筒に比べると)部品点数が多くなる
といった点になります。
現状日本のバイクメーカでは最も多く採用されている形式であり、その種類も様々。そして、単気筒と異なり、シリンダーの配置を変えてやることで、さらにエンジンに特性を付与することが可能で、採用されるバイクはスポーツバイクからアメリカンバイクといった、まったく性格の異なるバイクまで多種多様です。(シリンダー配置については別記事で記載します)
今現在(2019年1月現在)で、最も勢いのある形式と言えるでしょう。
2気筒エンジンの詳しい特性
単気筒エンジンは大トルクが特徴と書きましたが、2気筒エンジンは単気筒エンジン程の低回転トルクを出すことができません。その代わり、2気筒エンジンは回転体質量(シリンダー内に収められているピストン)が小さいため、単気筒エンジン以上に高回転化が可能で、最高出力を求めるバイクに採用されることが多いです。
エンジンの馬力はトルク×回転数で示すことができます。つまり、トルクを上げるか、回転数を上げるか、もしくはその両方を上げることで馬力を向上させることが可能です。
単気筒エンジンは上記のうち、トルクが大きいのですが回転数が大きくできないためある程度で頭打ちとなってしまい、馬力を上げることができなくなります。回転数を上げられない理由は摺動体(ピストン)の重量が大きいため。
分かりやすく言うと、鉄アレイを想像してみてほしいのですが、200gとか500gとかの軽いモノであれば、簡単に振り回すことができると思います。ただ、それが2kgとか4kgになってくると、持ち上げるだけでも大変で、振り回すことなどできなくなります。
これはエンジンも同じことで、シリンダー毎の排気量が大きい場合、どうしてもピストンサイズが大きくなり、重量が重くなってしまいます。ピストンの重量は数百グラム程度ですが、それが10000rpm(1分間当たり10000回転という意味)ともなる往復運動を行うと、その慣性重量はかなりのものです。
無理やり回転数を上げてしまうと最悪ピストンを支えるコンロッドの破壊にもつながりかねません。
一方、2気筒エンジンはピストン重量は単気筒のものと比べて半分以下にすることができ、高速回転させた際の慣性重量を低減させることができ、高回転化が可能なのです。
一例としてHONDA CBR250R(単気筒250cc)と、CBR250RR(2気筒250cc)を比べてみましょう。
CBR250R (単気筒250cc)
- 最高出力:21kW[29PS]/9,000rpm
- 最大トルク:23N・m[2.3kgf・m]/7,500rpm
※HONDA CBR250R 単気筒エンジンを積むライトウェイトスポーツモデル(生産終了) HONDA HPより引用
CBR250RR(2気筒250cc)
- 最高出力:28kW[38PS]/12,500rpm
- 最大トルク:23N・m[2.3kgf・m]/11,000rpm
※HONDA CBR250RR 2気筒エンジンを積むライトウェイトスポーツモデル HONDA HPより引用
ぱっと見で同排気量でも最高出力が2気筒エンジンを積むCBR250RRの方が高い事が分かります。そして、その最高出力、最高トルクを発生する回転数を見てみてください。
2気筒エンジンを積むCBR250RRの方が回転数が圧倒的に高いことが分かります。一方でトルクの最大値は同じ(発生タイミングは異なる)です。すなわち、馬力をトルク×回転数のうち、回転数を上げて稼いでいることが分かります。
勿論、部品点数が増えたり、シリンダーが2つに分かれることに関して重量は増加しますので、メリットばかりではありませんが、2気筒エンジンは回転数を上げることで単気筒以上の出力を得ることができるエンジンなのです。
2気筒エンジンが採用されるバイクの種類は?
2気筒エンジンは非常に様々な車種に採用されています。一例をあげると
- 250ccスポーツモデル (CBR250RR, YZF-R25, Ninja250等)
- 400ccスポーツモデル (CBR400R, Ninja400等)
- 大型スポーツモデル (NC750シリーズ等)
- アメリカンモデル (HONDA REBEL500や YAMAHA BOLT等)
- スーパースポーツモデル (DUCATI 959 Panigale Corse等)
- クラシックモデル (KAWASAKI W600等)
- スーパーモタード (DUCATI HYPERMOTARD 950等)
といった感じです。実に多種多様なバイクに採用されており、採用実績のない車種はないんじゃないかというほど。そして、DUCATIについては特に2気筒エンジンに力を入れており、パニガーレというスーパースポーツバイクにも採用されています。
特に気にしたことがなかったけど、調べてみると自分のバイクも2気筒エンジンだった、なんてことも多いと思います(*´ω`*)
2気筒エンジンの適切な使い方
※私の所有するNinja250R Special Editionも並列2気筒エンジンを搭載しています。
2気筒エンジンは、単気筒エンジンの特性と4気筒エンジンの特性を併せ持つ、オールマイティに近いエンジンであると思います。適度なトルクを持ち、回転数を上げることで適度な出力を得ることができることから、ずっと以前より搭載車種が展開されてきました(KAWASAKIだとGPZ250から続く並列2気筒エンジン、HONDAだとVTシリーズに搭載されるV型2気筒エンジンが代表です)。
言い方を変えれば器用貧乏で、単気筒ほど低速トルクには優れていないし、4気筒程高回転化できないため最高出力には劣りますが、近場のツーリングもしたいし、高速を飛ばして長距離ツーリングもしてみたいといった我儘な要求にも答えてくれる、懐の深いエンジンですので、特に得意、苦手といったステージはなく、ライダーの我儘な要求にこたえてくれるタイプです(*´ω`*)
4気筒エンジン
4気筒エンジンとは、2気筒エンジンと同様にシリンダー数が複数個に分かれているエンジンですが、特にそのシリンダー数が4個となっているエンジンです。
4気筒エンジンは、現在中排気量~大排気量に採用されている、最も高性能なエンジンと言えます。
※HONDA CBR650Fに搭載される水冷4気筒エンジン HONDA HPより引用
4気筒エンジンの特徴は
-メリット-
- 2気筒エンジンに比べさらに回転数を上げることができ、出力を大きくできる
- エンジンの回り方がスムーズで振動が少ない
- 2気筒同様シリンダーの配置を変えることで特性を付与できる
-デメリット-
- 単気筒、2気筒に比べると低回転域でのトルクが小さい
- 単気筒、2気筒に比べ部品点数が多くなる
- シリンダーが4つ並ぶため物理的に幅が出てしまい、コンパクト化が難しい
といった点になります。
その出力特性から中~大排気量のスポーツモデルに搭載されることが多く、MotoGPに代表されるバイクレースで使用されるエンジンもほぼ4気筒モデルが主となっています。
4気筒エンジンの詳しい特性
4気筒エンジンの特性は、何といっても2気筒エンジンよりもさらに高出力化が可能という点です。
先ほども記載した通り、馬力を向上させるためのトルク、回転数のうち、回転数を大幅に向上させることができます。なぜなら、同じ250ccで考えたとき、各気筒当たりの排気量が62.5ccとなります。
ということは、摺動体の重量がさらに小さくなることからエンジンのさらなる高回転化が可能。今は絶版となってしまっていますが、旧250cc 4気筒モデルの最高回転数は20000rpmに到達します。
2気筒と4気筒の回転数の差が示す出力の違いについて確認するために、旧CBR250RRと現行CBR250RRのスペックを比較してみましょう。
CBR250RR(MC51 2気筒250cc)
- 最高出力:28kW[38PS]/12,500rpm
- 最大トルク:23N・m[2.3kgf・m]/11,000rpm
※HONDA CBR250RR 2気筒エンジンを積むライトウェイトスポーツモデル HONDA HPより引用
CBR250RR(MC21型 4気筒250cc) ※94年式以前の最高スペックバージョン
- 最高出力:45PS/15000rpm
- 最大トルク:2.5kg-m/12000rpm
※当時のCBR250RRカタログより引用
このように最高出力発生回転数がさらに向上し、結果出力も大きいことが分かります。といっても、当時と現在では排ガス規制の問題等もあり、厳密には対等な勝負とは言えませんのでご注意を。
ただ、回転数の差が出力に大きく影響し、2気筒エンジンよりも4気筒エンジンの方が高回転化、高出力化できるというのは分かっていただけると思います(*´ω`*)
いいですよね、250cc 4気筒エンジン。。。もし所有している方はぜひ大事に維持してあげてください(*´ω`*)
尚、2気筒エンジンと同様に、4気筒エンジンにもシリンダー配置によって特性を変えているものがあります。V4エンジンが有名どころで、ホンダのレースバイクのRC213VやどDucatiのPanigale V4等に搭載されています。また、ホンダVFRシリーズも昔からV4エンジンを採用しているバイクの一つです。
当然ですが、2気筒エンジンよりさらに部品点数が増え、重量は増加する上に、エンジン自体が幅広になりがちで車体が大型化してしまうというデメリットもありますが、現状様々なバイクに採用、そしてMotoGPでも主流のエンジン形式になっていることから、最も性能・サイズ・信頼性の高いエンジンであることは間違いありません(*´ω`*)
4気筒エンジンが採用されるバイクの種類は?
4気筒エンジンは下記のようなモデルに採用されています。
- 400cc ネイキッドモデル (CB400シリーズ)
- 大型スポーツモデル (CBR650F、CBR1000RRシリーズ等)
- 大型ツアラーモデル (ZX-14R、隼等)
- 各メーカのレースモデル(RC-213V、ZX-RR、YZR-M1等)
※YAMAHA YZR-M1 YAMAHA HPより引用
基本的には高性能が求められるスポーツモデルへの採用が主です。
また、1990年代に起こった熾烈なバイクのパワー競争(特に250ccスポーツモデル)において、各社様々なバイクを投入していましたが、一貫して4気筒エンジンが搭載されていました。
日本においては、4気筒エンジンを搭載しているバイク=高性能バイクと言えます。
4気筒エンジンの適切な使い方
このエンジンですが、いちシリンダー当たりの排気量が少ないため、低速域でのトルクが細いです。そのため、特に低排気量(250cc~400cc)に関しては、回転数を高めに維持してトルクを稼いでやる必要があります。
よく、250ccの4気筒エンジンは音だけで進まない、といった揶揄もされますが、これは2気筒や単気筒エンジンと同等のトルクを発生させるために、回転数を上げる必要があるためです。低回転域でクラッチをつないでしまうと簡単にエンストしてしまいます(*´ω`*)
ただし、その代わり高回転を維持して走ることができれば、他のバイクを寄せ付けないほどのパワーを出すことができますし、やはりその音は魅力的です。F1エンジンとも言われるような官能的な音を奏でます。
そして、特にCB400シリーズは低排気量4気筒エンジンの弱点である低回転域のトルクの細さをバルブ制御技術Hyper Vtec Revoによって制御、低回転域でのトルク向上を実現しています。
ちなみに、このHyper Vtec Revoですが、なぜか旗艦車種にも搭載されていないCB400シリーズだけの特別な仕組みです。もしCB400が気になるのであれば、一度下記おすすめ記事を読んでみてください(*´ω`*)

まとめ
ということで、本日はエンジンの気筒数による違いについて解説しました。
現在バイクへの搭載が主流となっている単気筒、2気筒、4気筒と記載しましたが、気筒数が多くなるにつれて低速域でのトルクは細くなっていくものの、その分回転数の上昇により高出力化が可能となっています。
そして、その種類ごとに得意となるシーン、使い方が異なりますので、自分のバイクの気筒数を確認し、その仕様に応じた使い方をしてみて、そのエンジン本来の力を味わってみてはいかがでしょうか?
ちなみに、私は当時エンジンに関する知識が疎く、ZZR250やNinja250Rを4000rpm~5000rpmくらいの回転数で乗り回していましたが、このエンジンが元気になるのは7000rpm~10000rpm付近ですので、まったく特性に応じた使い方をできていませんでした(; ・`д・´)
今、大型バイクから250ccバイクに戻ってきましたが、Ninja250Rのエンジンが最も力を出せる領域を積極的に使うことで、絶対的な瞬発力は大型に敵わないものの、街乗りの範囲で言えばまったく文句のないレベルで乗ることができています。
なので、自分のバイクの特性を知るって大事だし、自分の愛車を乗りこなすためにも、一度自分のバイクの特性について調べてみていただければと思います(*´ω`*)
以上!
↓250ccバイクのすすめ
