こんばんは、たまです。
今日はちょっと趣向を変えて、あまり馴染みがないクルマの解説をしていこうと思います。
FCVと呼ばれる車をご存知でしょうか?
あまり身近な車とは言い難いのですが、現在だとトヨタがMIRAIを、ホンダがクラリティフューエルセルという名のFCVを販売しています。

TOYOTA MIRAI

HONDA CLARITY
このFCVですが、意外とその仕組みを知っている人は少ないのではないでしょうか?
そして、この車は、『日本の未来を運命づけると言っても過言ではない』ので、今後の普及を願って、今回はこのFCVについて解説していきたいと思います(*´ω`*)
FCV(Fuel Cell Vehicle)という燃料電池自動車
さて、FCVですが、小タイトルの通りFuel Cell Vehicleの頭文字を取ってFCVと呼ばれています。一部FCEVとも。
これを日本語訳すると『燃料電池自動車』となります。
燃料電池自動車という文字だけを見ると、EVのようなバッテリー(電池)を積み、その電力を利用して駆動しているようなイメージが沸きますが、実は駆動原理は全く異なります。
燃料電池自動車は、簡単に言うと車両内部で水素と酸素を反応させて電気を作り、その電気でモーターを回して車体を動かしています。
中学校で誰もが一度はやったことのある理科の実験、『水の電気分解』を思い浮かべてください(*´ω`*)
こんなやつです。なんとなく覚えていませんか?
簡単におさらいすると、この実験は『水に陰・陽の電極ぶっ刺して電気を流すと、なんと水が酸素と水素に分解されます』とういうモノです。
水+電気 ⇒ 酸素+水素
こんな感じ。
そして、陰極側に発生した水素に火を付けて水素を爆発(反応)させて遊んだことと思います(*´ω`*)
燃料電池車はこの反応の逆を行い、電気を生み出しています。
水素+酸素⇒水+電気
超ざっくり書くとこんな反応です。
これによって発生した電気を使ってモータを回しているのです。
なので、ガソリンを燃やしてエンジンを回すガソリン車とも、バッテリーの電気を利用してモータを回す電気自動車とも全く異なる、新しい仕組みによって動く車です。
水素を燃やして走っているわけではない。むしろ。。。
『え?燃料電池自動車って、水素ステーションで充填した水素をエンジン内で燃やして動いているんじゃないの?』
そう勘違いしていた人もいらっしゃると思います。
水素と言えば、電気分解よりもまず爆発とか燃焼とかそちらのイメージがありますし(^-^;
水素爆弾は核反応なので、これまた全く別ですが、この言葉も水素=爆発というイメージを連想させる原因かもしれません。
実際に燃焼室に水素ガスをぶち込んでガソリンの代わりに燃焼させ、エンジンを回すという仕組みの水素自動車もなくはないのですが・・・
実はガソリンエンジンを流用して、ガソリン代わりに水素を圧入、爆発燃焼させてパワーを得るというのは技術的に非常に難しく、なんとあのメルセデス・ベンツですら、数年前に開発を断念してしまっています。
これが出来たら非常に話が早かったのですが・・・
何が難しいのか?
そもそも単にガソリンエンジンを、水素を使って駆動させること自体はそれほど難しくありません。
ただ、それを行う際に問題となる点が2つあります。
ノッキングが発生しやすい
まず一点目。水素は、燃料としてエンジン内に噴射して爆発燃焼させるとき、反応性が高いことが災いして、高温化したエンジン内部に触れた瞬間に爆発してしまう(=ノッキング発生)という問題があり、制御が非常に難しいのです。
熱効率が悪い
そして2点目、上手くそれを制御できたとしても、水素の燃焼の速さによって、エンジンシリンダー内の熱境界層が破壊され、熱が外に逃げやすくなってしまいます。水素が燃える際に、燃えるという表現ではなく爆発と言ったりしますが、それはこの反応速度の速さからです。結果、エンジンの熱効率が悪くなってしまうためです。
これらの問題によって現在は水素燃焼タイプのエンジンがまだ普及していないのです。
そこで、比較的動作条件の容易なモータを駆動させるための電気を発生させる為の源として水素を用いた燃料電池車が主流になっているわけです(*´ω`*)
FCVにも課題はあるの?
ということで、水素を燃焼させるのではなく、電気を取り出すための電池としての運用をする事になった訳ですが、このFCVに弱点は無いのでしょうか?
もちろん、現状いくつもの問題点があります(-_-;)
いくつかご紹介します。
水素と鉄は相性がめっちゃ悪い!
燃料電池車は水素を車両内に貯め込んでおく必要があるのですが、その水素を貯めるタンクは鉄製で作ることが出来ません。
何故かというと、金属には水素脆化と呼ばれる水素を取り込んで強度が低下してしまう性質があり、水素に振れた金属は年月が経つとボロボロになってしまいます。
なので現在の水素タンクはカーボン製が用いられているのですが、カーボンはコストが高いうえに製造が難しく、容易に大量生産できるものではありません。
ただ、上述の通り鉄製タンクが使えないので、燃料電池車にはカーボン製タンクが必要になり、大量生産を行う上での技術的課題の一つとなっています。
走行距離を稼ぐためには大量の水素が必要
次にFCVに充填する水素量の問題。
ご存知の通り水素は気体です。気体という事はタンクへの充填効率が低く、充填効率を上げようとすれば圧力をかけるか冷やして液化するかのどちらかになります。
本来は液化を選択したいところではありますが、液化するには水素を-260℃もの超低温にする必要があります。
ということは、電気を作り出すための水素を極低温の液体に保つために、得られる電気以上の電力を消費するという意味不明な状況になってしまうので、液化して運搬する案は採用できません(*´ω`*)
となると、大量の水素を貯め込むために、超高圧をかけてタンクに封入するしかありません。
ちなみに、トヨタが発売しているFCV MIRAIのタンクの充填圧力はいくらか知っていますでしょうか?
70MPaです。
ちょっと物理を知っている人なら絶対に近づきたくない圧力ですね(-_-)
もう、タンクから水素が漏れたら引火して危ない!とかいうレベルではなく、亀裂が入った瞬間に圧力差によってタンクが爆発して車ごと木っ端微塵に・・・
さすがにタンク周辺はそんなことにならないように強度が考えられているとは思います(*´ω`*)
で、このタンクに水素を充填しなければならないのですが、勿論タンクより高い圧力でないと補充できません。圧力は高い方から低い方にしか流れないので。
なので水素ステーションも超高圧状態を維持できる構造になっていないといけないのですが、これまた技術難度が超高いのです。
インフラを一から構築しなければならない
そして、上述した水素ステーションを、一から全国に展開しなければなりません。
ガソリンスタンドを改造すればいけるのか?
それは無理です。車の構造も違えばスタンドの構造も全く違います。
水素の充填作業はポンプで吸い上げて流し込む、なんて可愛い作業で済むようなものではありません。
しかもめちゃくちゃ高額です。
ガソリンスタンドが1箇所あたり6~7000万円ほどらしいですが、水素ステーションは1箇所につき約4~5億円掛かるらしいです。
絶対に将来が約束されているのならまだしも、現時点で思惑通りに普及するかどうかも分からない物に、そこまで投資できるかというと中々難しいところですよね・・・。
しかし、ステーションが無ければ車も売れないというジレンマ(^-^;
ちなみに私の家から最寄りの水素ステーションまでは片道70kmほどでした。
MIRAIの航続可能距離が600km/1充填らしいので、水素の補充だけでタンク容量の1/4消費します。
うちの車がFCV化するのはずっと先のことですね・・・
なぜFCVが日本を救うの?
タイトルにある通り、FCVの普及は日本の将来に大きく関りがあります。
なので国と企業が協力して水素自動車の普及に取り組んでいます。
実はこの内容を詳しく書きたかったのですが、ここまででかなりの文章になってしまったため、一旦切ります(*´ω`*)
次回は日本がFCV戦略を推し進める理由についてご紹介します。
おまけ
トヨタのMIRAIですが、実はカーセンサー等で中古車を見ることが出来ます。
しかもその価格は、新車価格が600~700万円するにもかかわらず、200万円ちょっと~というバーゲンプライスです笑
一足先に未来(MIRAI)を体験してみたいと思っていて、かつ近所に水素ステーションのある方は、一度中古車を検討されてみてはいかがでしょうか(*´ω`*)